翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』書評

『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』の書評が、ちらほら、ブログや各種サイトにあがってきています。ありがとうございます。

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 その一部をご紹介します。

  千葉の子どもの本の店、会留府(えるふ)さんのブログ、えるふ通信。

「……ハラハラとする物語のなかに感動的な話がおりこまれていて、十分ミスティリアスな要素もあり、現実の生活からしばし離れる事のできる小説のおもしろさを味わう事ができた。
 やっぱりこのような本が日本のYA向きの小説にあまりみられないことを残念に思う。作家さん書いてくださいませんか、ともかくおもしろい物語を!」

( エベレスト・ファイル: えるふ通信 )

 そうなんですよ。この最後のところはわたしもよく思います。テーマとか哲学とか倫理観とか、そういうものがこもっていることも大事なんですけど、「おもしろい小説」が読みたいじゃないですか。一般むけには、だんだんエンタメと純文の中間的な小説が増えているように、YA向けにもそういうものが増えてほしい。というか、そうじゃなきゃ読まないよ。

 えるふ通信さん、ありがとうございます。

 

 いつもブログやツイッターを見させていただいてます、Librarian Nightbird さんのブログ。Librarian Nightbird さんのサイトは、ひとことで言って、ものすごい情報量です。海外のYAについては、どこよりも早くて詳しいのですよ。お世話になっています。

「登山部分はあまりドラマチックに飾ったところがなくシンプルで、描写はあっさりだけどディテールはリアルです。……ディテールの拾い方が、1回そこに行ったことがある人っぽい。
 ……

 でも、わたしがこの作品の中でいちばん面白かったのは、実はまっすぐで濁ったところがないカミではなくて、政治家ブレナンだったりします。
 ……ブレナンは最初薄っぺらに見えて、後で多面的に見えてくるキャラクターなんですよね。」

( エベレストファイル シェルパたちの山 / マット・ディキンソン【レビュー】 - Librarian Nightbird )

  うん、そうそう。わたしもこのブレナンという、エベレスト登頂を大統領選に生かそうとするアメリカの政治家のキャラは、なかなかおもしろいと思うのです。いろんな意味でアメリカ人っぽいのですが、憎めないところもあり、最後は、えっ、そうなるの? という結末です。

 Librarian Nightbird さん、ありがとうございます。

 

 続いては、この方のブログも時々のぞかせてもらっています、「児童文学書評 おいしい本箱 book cafe 」さん。図書館員さんお二人で書いているブログだそうです。前の「おいしい本箱 Diary」のころから、ちょくちょく読ませてもらっています。

うちの図書館で高校生むけの冊子を作るというので、急いで読了。山岳小説も色々読んだが、シェルパを主人公にした小説は珍しいのではないか。エベレストという特別な山の魅力と、主人公のシェルパの少年・カミのピュアさが呼応しあって、厳しく美しい物語になっている。
 ……
 ……しかし、エベレストはそんな人間たちを、丸裸にしていく場所だ。たったひとり、「個」として偉大な存在に向き合ったときに、どう生きるのか。自分以外、誰も知らない嘘を、人はつき通すことが出来るのか。」

( エベレストファイル シェルパたちの山 マット・ディキンソン 原田勝訳 小学館 | 児童文学書評 おいしい本箱 book cafe )

 そうです、そういう作品です。ああ、こういうこと、あとがきに書きたかった。「おいしい本箱 book cafe 」さん、ツイッターにも反応してくださってありがとうございました。

 

 

 というわけで、『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』、好評発売中ですので、よろしく。ほんと、おもしろいです。

www.hanmoto.com

 

(M.H.)