翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

タイからやってきた『帰命寺横丁の夏』

 柏葉幸子さんの『帰命寺横丁の夏』の英訳版、"Temple Alley Summer"、訳者でタイ在住のエイヴリ・フィッシャー・宇田川さんから送っていただきました。原作と同じ、佐竹美保さんのイラストレーションが素敵です。中には、やはり佐竹さんの描いたカットがたくさん。造本も、一部紙の色を変えたりと、とても丁寧な凝った造り。原作はどうなってるのかな。

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 宇田川さんとは、以前JBBYのイベントでご一緒したことがあるご縁ですが、わざわざタイから送ってくださいました。ありがとうございます!

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 できれば原作と読みくらべてみたいと思います。JBBYのイベントの時に、エイヴリさんが英語に訳された、最上一平さんの短編 "Festival Time" (原題は「祭りの後先」だったかな?)を読みましたが、日英翻訳には、英日翻訳と同じ&特有の難しさや翻訳姿勢があるのだなあと感じたことを覚えています。とくに、日本の文化や風習の翻訳や、一人称の処理の問題がありましたっけ。

 

 今回、その"Festival Time"がおさめられた"The Best Asian Short Stories" という短編集も送ってくださいました。これは、アジアのさまざまな国出身・在住の作家が英語で書いた短編集ですが、その中に、エイヴリさんが英訳した"Festival Time"が収められています。

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 この本の編集者は、インド出身でアメリカ在住の学者・編集者・作家のDebotri Dhar さん。とても興味深い試みです。出版社は奥付をみるとシンガポールの"Kitaab"という会社。「キターブ」って、どこかで聞いたことのある言葉だなあ、と思ったら、イラクにいる時によく使ってました。「本」とか「書類」という意味で使っていたような……。ウェブスターにもkitabで載ってますね。本、とくに聖典の意味のようです。

 

 本がとどいてから二日、いろいろなことを考え、感じました。エイヴリさん、ありがとうございました。お返しに送った『ぼくは川のように話す』も、無事、着いたと、昨夜メール連絡がありました。

 タイも、毎日かなりのコロナ患者が出ているようですが、どうかお気をつけて。エイヴリさんのメールによれば、タイでは今、感染予防のために、郵便物は一日おいてから開封(!)するそうです。なんだか、それはそれで期待感が高まっていいかもしれません(って、そういう問題じゃないけれど) 

 そろそろ開封してもらったかな? 

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(M.H.)