翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『ペーパーボーイ』3刷 & STAMP BOOKS のこと

『ペーパーボーイ』の3刷見本がとどきました。うれしい! 

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 少しずつ売れて、初刷から5年めで3刷が出たのは、なんだか、かえってうれしいです。長く読まれる本になってほしい。

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 続編の『コピーボーイ』もいい作品です。こちらもぜひ!

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 この2冊はもちこみなのですが、最初にもちこんだ出版社では、「うちでは出せないけど、たぶん、あの編集者さんなら気に入ってくれるんじゃないかな」といって、岩波書店のSさんを紹介してくださったのがきっかけで出版につながった、めずらしいパターンです。こういうのはうれしいですよね。原書の良し悪しもあるけれど、タイミングとか、出版社やシリーズ、編集者との相性がじつは企画が通るかどうかの分かれ目なので。

 

 で、この岩波書店の「STAMP BOOKS」ですが、骨太のYA作品を出してくれている、ありがたいレーベルです。下の写真は今回いただいた『ペーパーボーイ』のうしろに収録されている STAMP BOOKS のラインナップの一部。これからも続いてほしいレーベルです。装幀の統一感もあって、こういうビジュアルは、YA翻訳に携わる身としてはとてもうれしい。この一作を目立たせよう、という装幀にしたくなるのはわかるのですが、シリーズとしての本の作り方は、長い目で見て効いてくると信じたいです。

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 改めてこのリストをながめていて思い出したことを。

 神戸万知さん訳の『アリブランディを探して』というタイトルが見えますが、これは1992年の作品で、わたしも、1994年に、某出版社のリーディングでレジュメを書いたことのある本です。いい作品だと思って評価したのですが、その時の担当編集者さんの評価は低くて、出版につながらなかった作品です。この作品は岩波の編集者さんが気に入っていて、たしか、STAMP BOOKS の初期の一冊として、2014年に、つまり原作発表から20年も経って翻訳出版されています。

 下の写真は、当時つけていた読書記録。"Looking for Alibrandi" についている☆マークは高評価の印です。75)という数字は、この年読んだ本の通し番号で、この頃は100冊近く読んでいたようで、今はとても……。当時は塾の仕事はフルタイムなので、ほとんど通勤の車中で本を読んでいました。若かったなあ。

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 もう一冊、STAMP BOOKS のラインナップの中に、『アラスカを追いかけて』というタイトルが見えます。金原先生の翻訳ですね。ジョン・グリーンです。じつはこの作品には既訳があって、白水社から出ている伊達淳さん訳のものです。事情は知りませんが、翻訳権が岩波さんに移っての再訳になっています。

 これは書棚にあった、白水社バージョン。このカバーもいい。f:id:haradamasaru:20210826191943j:plain

 

 というわけで、レーベルのこととか、ちょっと前の作品の発掘とか、考えるきっかけになった増刷見本の到着でした。

 

 

(M.H.)