翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

「わたしは〇〇のように話す」

 先週の木曜日、所用があって神保町に行った際、「ブックハウスカフェ」さんにおじゃまして、訳書『ぼくは川のように話す』にサインしてきました。よろしかったら。

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(ブックハウスカフェさんのインスタから
https://www.instagram.com/p/CZBIQcop9Ie/ )

 

 なぜ「わたしは〇〇のように話す」と書いたかというと、

 YouTube で原作者のジョーダン・スコットさんを招いて、参加者全員が吃音者というイベントを視聴したときに、司会者の方が(やはり吃音者)、「みなさん、自分の話し方は何に似ていますか?」という質問をして、それに答えたみなさんの言葉が、それはもうさまざまで、ちょっと目をひらかれたからです。

www.youtube.com

 氷の塊、ジェットコースター、お姫さま、チータ、山、でこぼこ、大きな石、ペンギン、歯磨き粉、風……。みんな、自分のしゃべり方をそれぞれの感じ方であらわしていて、聞いているこちらの心も開放されたように感じました。

 その直前に、「自分以外の吃音者を知っていますか?」とたずねられたスコットさんは、「ふしぎだけれど、今日が初めてだ」と30人あまりの全員吃音者の参加者のみなさんにむかって答えたのが印象的でした。吃音は、大人になるにつれて治る人も少なくありませんし、どもらずに話すためにトレーニングを受けたり、あるいは、どもりやすい言葉を言い換えたりすることで、傍目には吃音者だとはわからない人もいるからだと思います。

 

 

『ぼくは川のように話す』(I Talk Like a River)というこの本のタイトルに、多くの人が、川は流れるのだから、吃音のたとえにならないのではないか、という疑問をおもちのようですが、川はゆったりと流れるだけでなく、よどんだり、泡だったり、曲がったり、渦を巻いたりするのです。それでも流れるのですけれど。

 そして、上にあげたような、さまざまなたとえは、参加している吃音者のみなさんにとって、それぞれの「川」であることが感じとれ、なにかにたとえることの力、言葉そのものの力を感じました。

 

 というわけで、サイン本には「わたしは〇〇のように話す」と書かせてもらいました。吃音がない方も考えてほしい。ああ、あと、この本の主人公は男の子なので、翻訳は「ぼく」としましたが、英語は「I」なので、「わたしは……」としました。吃音者は男の人のほうが多いのですが、女の人もいらっしゃいますから。英語は三人称では男女をわけるのに、一人称ではいつも「I」ですからね。

 

 さて、自分の話し方は何にたとえられるのだろうか? 落ち着きがないから、うーん、そうだな……。

 

(M.H.)