翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第59回 文体研究(5) ── 『ウェストール短編集』

★さて、文体をとりあげた最後の回ですが、原作者の文体と翻訳者の文体について少しふれています。翻訳者の場合は文体なのか、テクニックなのか、微妙なところですね。さらに、編集者さんの関与のことも……。(2017年09月19日「再」再録)★

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 この回でとりあげたロバート・ウェストールの短編集です。表紙は宮崎駿さん。いいですねえ。イングランドって感じです。 

真夜中の電話 (児童書)

真夜中の電話 (児童書)

 

 ヤングアダルト、いや大人にも読んでほしい、ほんとうに面白い短編集です。これに続いて、野沢佳織さん訳のもう一冊の短編集も出ています。こちらもおすすめ。訳者の趣味の違いも出ていると思います。

遠い日の呼び声: ウェストール短編集 (WESTALL COLLECTION)

遠い日の呼び声: ウェストール短編集 (WESTALL COLLECTION)

 

 

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コラム再録「原田勝の部屋」 第58回 文体研究(4) ── ピエロを探せ

★登場人物のバリエーションには、やはり作者の意図がこめられているはずです。中でも、三枚目の脇役は、そうとわかってせりふの処理をしないといけません。浮いちゃいけないけれど、目立たなきゃいけない。(2017年09月18日「再」再録)★

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 この回でとりあげた『王国の鍵2 地の底の火曜日』の表紙。革装風のカバーをはずすと、表紙は黄色です。デザインは永松大剛さん(BUFFALO.GYM)。このシリーズは、カバーをはずすと明るい色が出てきます。大好きなデザインです。 

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 こちらは原書。二種類あります。

Grim Tuesday (The Keys to the Kingdom) Grim Tuesday (The Keys to the Kingdom, Book 2)

 

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第57回 文体研究(3) ── 『ザ・ブック・オブ・ザ・ダンカウ』

★英語の narrative は、「物語」でもあり、「語り口」「語りの」といった意味をもちます。narrate、narration と同根ですね。そう「書く、訳す」ではなく、「語る」のです。(2017年09月17日「再」再録)★

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 Book of the Dun Cow, The ブック・オブ・ザ・ダンカウ

  原書と訳書の表紙。原書はいかにも寓話的ですが、訳書はファンタジー的と言えるかもしれません。

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『オオカミを森へ』見本出来!

 9月20日発売です。よろしくお願いします。

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 ジェルレヴ・オンビーコさんのイラスト、最高です。うしろの雪の積もった針葉樹もきれいですねえ。わたしは若いころ、西シベリアに仕事で4ヶ月、それも秋から冬にかけて滞在した時、こういう針葉樹の森を見ましたが、ほんとーっに美しかった。ジェルレヴはフィリピンのイラストレーターさんなのに、よく描けるなあ。

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『弟の戦争』20刷

『弟の戦争』の増刷見本がとどきました。

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 累計44,000部。

 大した数字ではないかもしれませんが、初版1995年から20年以上読まれていることがとてもうれしい。


 と、同時に、今も世界のどこかで戦争が行われていること、そして、幼くして戦場に駆り出される子どもたちがいることはまったく変わっていないのがとても悲しい。


    ウェストールは怒っているだろうなあ。


(M.H.)

コラム再録「原田勝の部屋」 第55回 文体研究(2) ── 『雲母の光る道』

★この作品は、修飾語が多めの、どちらかというと「濃い」文体です。それが、少し昔のアメリカ南部という作品世界をよく表わしています。(2017年09月13日「再」再録)★

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 この回にとりあげた『雲母の光る道』の原作、"Mica Highway" の書影です。メンディングテープで補修してあるように見えますが、こういうデザインなんです。最初に見た時は、仮の表紙なのかと思いました。

Mica Highways

 

  翻訳版はこちら。

雲母の光る道 (創元推理文庫)

雲母の光る道 (創元推理文庫)

 

 

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『森のおくから』(レベッカ・ボンド作、もりうちすみこ訳)

 訳したかったのに、訳されてしまった本シリーズ、第?弾!

 

『森のおくから ── むかし、カナダであった ほんとうのはなし』(レベッカ・ボンド作、もりうちすみこ訳、ゴブリン書房)が発売されました。

 

 これ、好きな絵本です。原書の表紙。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第54回 文体研究(1) ── 『フェリックスとゼルダ』

★作者(=翻訳者)と物語や登場人物との距離を、原文に沿って、あるいは原文の意図をくんで、近づけたり遠ざけたりすることが、文体を決めるひとつの要素ではないかと思います。(2017年09月11日「再」再録)★

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 この回でとりあげた『フェリックスとゼルダ』の帯。

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 「史上最強の楽天家」というコピーは、使えそうで、なかなか使うのがむずかしい表現だと思います。これは版元のあすなろ書房さんが考えたものです。表紙のパステルグリーンの色使いもそうですが、ホロコーストの話だとは一見思えません。そのミスマッチが狙いです。じつは、こうした装幀やキャッチコピーも、作品の文体から受ける印象が、色使いや言葉につながっているのではないでしょうか。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第53回 文体を考える

★文章の内容だけでなく、文体という得体のしれないものが、翻訳という行為を通じてなお読者に伝わる不思議。いや、伝わるのか?  というお話です。(2017年09月10日「再」再録)★

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 文体論はむずかしい。

 訳文の文体は、日本語なのですから、そういう意味では翻訳者の文体なのですが、でも、原作者の文体の一部は日本語に移るところが面白い。

 お断わりしておきますが、文体論なんて何ひとつ学んだことがないので、全部自己流による分析です。良い子は真似しないでください……。

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