翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第28回 "healing" は「癒やし」か?

★原書に何度も出てくるある単語を、日本語でも一つの訳語に統一して訳すのがむずかしいことは、第23回「"very"はとてもか?」の回でも触れました。この回では、さらにそれがキーワードに近い言葉なのに、訳語を統一できなかったケースを扱っています。簡単に言えば、言葉というものは文脈によって意味のゆらぎがあるだけでなく、言語が異なれば、その揺れ方が異なるわけで、それを踏まえての訳語の選択が必要になります。(2017年08月21日「再」再録)★

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 この回でとりあげた作品は『スピリットベアにふれた島』(ベン・マイケルセン作、鈴木出版、2010年)です。日本語版の表紙は以前、載せたことがありますから、今回は、原書の表紙を。

Touching Spirit Bear

 なかなかインパクトのある装画です。この場面、すごいんですよ。校正の時は、編集者さんから、ちょっとカットしたほうがいいんじゃないか、という意見もあったくらい。なにがすごいかは、ぜひ、ご一読を。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第25回 サッカーを訳す

★昨日は土砂降りの雨の中、埼玉スタジアムに行ってました。最後、危なかったですが、レッズはFC東京に勝ち、とりあえずひとつ順位を上げました。堀体制になって、気のせいか、選手がのびのびやっているように見えます。ダービーには勝てなかったものの、シャペコエンセ戦もふくめ、3勝1分と復調しています。新加入のマウリシオが、いかにもDFらしい選手で最終ラインが安定しました。左右どちらでも蹴るし、パススピードが速く、リズムがよくなります。何より、堀監督が、少しずつ選手のローテーションをしていることがいい……。あ、これ書いてるときりがないので、この辺で。(2017年08月20日「再」再録)★

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 いつもこのブログを読んでくださっている皆さんはご承知の通り、わたしは浦和レッズのサポーターです。応援しはじめてから18年め。シーズンチケットは16年めになります。

 福田の「世界でいちばん悲しいVゴール」も、土橋の「昇格Vゴール」も、ゴール裏で見ました。土橋のミドルシュートが弧を描いてゴールに吸い込まれるまでのコンマ何秒かは、今でもはっきりとまぶたの裏に焼き付いています。2004年の2ndステージ初優勝の時は、あの大量の紙吹雪を指定席においてまわるのを手伝いました。雨模様の国立のナビの初優勝も、埼スタでのACL優勝も(天皇杯の優勝だけは、いつも実家に帰省していて見ていませんが)、この目で見ました。

 たぶん、イングランドやイタリア、ドイツ、南米には、そういうことを、もう3世代、4世代やり続けている人たちが、何百万人も、何千万人もいるんだと思います。

 この回で例としてとりあげた『銃声のやんだ朝に』(ジェイムズ・リオーダン作、徳間書店、2006年)のサッカーシーンは、そういう人たちが読んでもうなずける、でも、初めて読んでもそれなりにわかる、そういう訳文にしたいと思って訳しました。

 

  http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/e/e1/Portsmouth_FC_crest_2008.png

(ポーツマスFCのエンブレム)

 

 残念ながら、この物語に登場する実在のフットボールクラブ、ポーツマスFCは、財政危機に陥って資格を剥奪され、今は、サポーターの基金で再建途上にあります。プレミアの三つ下のリーグで戦っているようですね。でも、サポーターの基金がチームの存続を支えたことを、熱烈なポーツマス・サポーターだった作者のリオーダンさんは、きっと天国で喜んでいるのではないでしょうか。

 

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第24回 インチとセンチ

★結局、日本の作家が書くとしたらどう書くか、その状態にできるだけ近づけよう、ということなのだと思います。(2017年08月19日「再」再録)★

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 この回で例としてとりあげたのは、『王国の鍵4 戦場の木曜日』(ガース・ニクス作、主婦の友社、2010年)です。原書の表紙はこちら。23回では、シリーズ第1巻のハードカバー版の表紙を載せましたが、今度は、この第4巻のペーパーバック版を載せておきます。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第23回 very は「とても」か?

★もちろん、very は必ず「とても」と訳すわけではないのですが、自分の訳本を調べたら、それが如実にわかったので、ちょっとびっくりしました。そう、機械的に訳語を決めてはいけません。と、自分で言いながら、つい……。(2017年08月18日「再」再録)★

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 この回で題材にしたのは、『王国の鍵1 アーサーの月曜日』(ガース・ニクス作、主婦の友社、2009年)。原題は “The Keys to the Kingdom 1, Mr. Monday” です。原書の表紙がかっこいい。

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 全7作のシリーズですが、なかなか面白いですよ。買い揃えるのは大変かもしれませんが、けっこう図書館には入っていますので、ぜひ!

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第22回 出だしは力が入るもの

★出だしが読みにくいと、読んでもらえない(買ってもらえない)んじゃないかと心配になります。原作者も、きっとかなり力を入れて書くんじゃないでしょうか。まずは1ページ読ませないと、そして、そのページをめくってもらわないと。(2017年08月17日「再」再録)★

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 この回でとりあげたYA小説は、『スピリットベアにふれた島』(ベン・マイケルセン作、鈴木出版、2010年)です。原題は、"Touching Spirit Bear"。読書感想文の課題図書になったおかげで、たくさんの中学生に読んでもらうことができました。

 この装幀、大好きです。装幀は長坂勇司さん、装画はヒロミチイトさんです。

スピリットベアにふれた島 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

スピリットベアにふれた島 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

 

 

 装画は背表紙までぐるりと回っています。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第21回 タイトルはだれが決める

★九月刊行の『オオカミを森へ』は、原題が "Wolf Wilder" なので、パターン②の「原題直訳」と、パターン③の「新しいタイトル」の折衷ですね。体言止めではないので、『明日に向かって撃て』型、いや、助詞で終わっているので、『去年マリエンバートで』型かな。古っ!(笑)(2017年08月16日「再」再録)★

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 最新刊『ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯』のタイトルは、けっこう考えましたねえ。原書タイトルは、"No Crystal Stair"。これは、作中に引用されている、ラングストン・ヒューズの詩、"Mother to Son"の一節です。

 最初はこれをそのまま、『水晶の階段じゃなかったけれど』としていました。表紙のラフも、このタイトルで作ったものもあったんです。「水晶」という文字にインパクトがあって、いいなあと思っていたのですが、内容がさっぱりわからない、ということで、いろいろ考えて『ハーレムの闘う本屋』になりました。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第19回 第二外国語

★九月に出る新刊、『オオカミを森へ』(キャサリン・ランデル作、小峰書店)では、ほんの少しロシヤ語が出てきます。ほんの少しね。あれくらいなら大丈夫。(2017年08月15日「再」再録)★

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 第二外国語、に遭遇したのは、大学に入った時でした。昔は、よくあったと思うのですが、今時の大学はどうなんでしょうか? 

 たまに母校の東京外国語大学へ行くと、さまざまな言語を専攻している後輩たちが生き生きと学生生活を送り、留学へと出かけ、また帰ってくる様子を見て、その姿がまぶしく思えます。怠惰な外大生だったわたしは、専攻語もろくに習得できないままに卒業してしまったことを、今さらながら後悔しています。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第18回 リーディングのディテール(その3)

★リーディングは、翻訳書という形ではあれ、本を世に出すための第一歩と言ってもよく、もっと大切にすべき仕事ではないかと、この頃強く思うのですが、どうでしょう?   出版社も、そこのところをもっと真剣に考えてほしい。(2017年08月14日「再」再録)★

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だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ

だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ

 

  都築響一さんの、この本、本文中にもとりあげましたが、本を作るということ、ものを書くということについて考えさせられる本です。

 

 また、NHKで放送していた書評番組、『週間ブックレビュー』の児玉清さんのこともとりあげました。児玉さんは、残念ながら、このあと、2011年に亡くなられています。本を「評価する」のではなく、児玉さんがそうだったように、「面白さを語る」という姿勢は、じつはリーディングの文章にも必要なのでないでしょうか。

 編集者だって、冷静な評価だけを聞きたいわけじゃないと思います。

 

 では、どうぞ。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第17回 リーディングのディテール(その2)

★この回で「すべてのレジュメは主観的」と書いていますが、ほんとうにそうだと思います。その「主観」が、世間とズレているかどうかは、また別問題ですが、ズレていてもいいんじゃないでしょうか。(2017年08月13日「再」再録)★

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 この回は、読んだ原書の内容をレジュメに書く時の注意点をまとめています。その中で、「一ページ千二百字程度を縦書きで、あらすじ三、四ページ、感想二ページ程度に」と書いていますが、今は、少し変えていて、横書きで、タイトル(直訳と日本語仮題)と作者名の次に、(1)作品概略、(2)主要登場人物、(3)あらすじ、(4)コメント、(5)原作者について、としています。

 あとは適宜、作品の構成、人称、受賞歴、映画化予定、翻訳権が空いていることがわかっている場合はそのこと、を作品概略とは別立てに書くこともあります。

This Dark Endeavour

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第16回 リーディングのディテール(その1)

★リーディングとは、結局、原書を読むこと。そして、どこがどうおもしろいと思うか、思わないか、を文章にすること。(2017年08月12日「再」再録)★

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 リーディングとは、原書を読んで作品を評価し、それを報告、あるいはアピールするためのレジュメにまとめる作業のこと。出版社から依頼されて行なう場合と、自ら企画をもちこむために行なう場合があります。

 いろいろなやり方があると思いますが、わたしなりの方法をまとめ、3回に分けて書きました。

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 これは、わたしの「リーディング・ノート」。

 

 では、どうぞ。

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