翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

「BOOKMARK」14号

 届きました! 今回のテーマは「against!」(「ノー」と言うこと)。

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 タイムリーなテーマだと思います。

 今の日本社会は、不正義に対して、「それはちがうだろ!」って言いにくい雰囲気を、既得権益をもった人たちが作ろうとしている。ふつうに考えておかしなことが屁理屈で通っている。制度や規則を時代や実態に合わせて変えようとしない体制側に対して、もっと声をあげるべきだろう。

   巻頭エッセイは、あさのあつこさんの「不羈という一言」。

「個を埋めようとする、溶かそうとする、流し去ろうとする大きな力に抗し、戦う。その意気をわたしたちはいつの間にこんなに萎えさせたのだろうか」という一文が胸に刺さります。

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 今回、読んだことのある本は二冊。三辺さんの訳された『エヴリデイ』とこれ、『移動都市』。

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 "Mortal Engines" は出てすぐに原書で読んでいるのですが、もともとヤングアダルト作品なのに、内容は、移動する巨大な機械都市同士が弱肉強食の戦いをくりひろげるという仰天の発想、スケールの大きなSFで、児童書の版元にはもちこみづらく(相談はしたところはありますが)、そうこうしているうちに、東京創元社から刊行されたのでした。東京創元社、YAを拾ってくれる頼もしい出版社です。映画化もされましたね。

 

 金原先生と野沢佳織さんの『帰還』は、先日野沢さんからお話を聞いたのですが、読み応えのあるノンフィクション。ピューリッツァー受賞作です。

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 こうして「読むべき」本がたまっていく幸せ……?

 

(M.H.)