翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

今年も濃密な時間でした。

 第四回日本翻訳大賞授賞式、行ってきました。

 楽しかった。パワー補充してきました。西崎憲さんたちの演奏は回を追うごとに朗読との噛み合い具合が絶妙になってきています。

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 二次選考通過作18作の書影と、司会の米光一成さん、選考委員の金原瑞人先生、松永美穂さん。

 書影の中には、ヤングアダルトもあります。『サイモンvs人類平等化計画』は三辺律子さん訳、『嘘の木』は児玉敦子さん訳、『肺都』は古屋美登里さん訳。

 

 大賞受賞作は二作。

『人形』は、訳者の関口時正さんが海外にいらっしゃるとのことで、版元の未知谷の編集者さんが登壇。この大部の書籍を本にするための苦労話が面白かった。ふつうに組むと広辞苑より厚くなるそうで、製本できなかったそうです。行数を増やし、紙を薄くしても厚さ6センチ。1,250ページ、6,000円、ページ単価は決して高くない、とのこと。それはそうですが……。鈍器といっても過言ではありません。ポーランド語からの翻訳です。

人形 (ポーランド文学古典叢書)

人形 (ポーランド文学古典叢書)

 

 

 

    かたや、『殺人者の記憶法』は韓国語から。翻訳の吉川凪さん、あまり苦労することなく訳せた一冊だそうです。柴田さんの韓日・日韓の翻訳事情についての質問が興味深かった。日本の現代文学はどんどん韓国語に翻訳されているそうですよ。

殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)

殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)

 

 

 

    しかし、今回なにが面白かったと言って、最後にゲストとして登壇した町田康さんによる『宇治拾遺物語』現代語訳の朗読。孔子と、なんとかいう人とのやりとりが、関西弁混じりの無茶苦茶砕けた現代語訳で、会場は爆笑の渦。一度やってみたいなあ、あんな訳。

日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)

日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)

 

 

 

    金原先生はじめ、子どもの本の訳者にも何人か会えて、元気をもらいました。

 

 西崎さん曰く、当初集まった資金はほとんど使ったけれど、これからも継続するそうなので、たぶん、またファンドレイジングがあるのでしょう。協力しますよ。こんな面白いイベント、死ぬまで毎年見に行きたいですからね。

 

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 会場となったデジタルハリウッド大の入っているビル。神田川にかかる聖橋の上から。

(M.H.)