翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

IBBY(国際児童図書評議会)のウクライナ紛争に関する声明

 IBBYは、昨日2月26日付で、ウクライナの子どもたちを気づかう声明を出しました。英語ですが、以下のリンクから読めます。

https://www.ibby.org/about/statements

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 冒頭の抄訳です。

「戦争は、昔から、罪のない人たち、とりわけ、すべての子どもたちを苦しめてきました。子どもたちは、国の指導者たちの衝動的なふるまいとはなんの関係もありません。最初に苦しみ、そして、もっとも長いあいだ苦しむのは子どもたちです。戦時下の国にいる子どもたちは、たとえ体に傷を負わなかったとしても、心に大きな傷を負うことを、わたしたちは知っています。安心や平和という感覚を、突然、丸ごと失ってしまった子どもたちも同様です。こうした体験は、心に深い傷を残すかもしれません。

 私たちは信じています。文学には、とくに子どものための文学には、未来を変える力があることを。文学には、戦争ほど破壊的なものはない、破壊するのではなく、話し合いなさい、と次の世代に教える力があるのです。

 IBBYは、現在のロシア軍による主権国家ウクライナへの軍事侵攻を深く懸念しています。」

 

 以下、IBBYのウクライナ支部、そして、モスクワ支部、サンクトペテルブルク支部のメンバーへの支持や、苦しんでいる子どもたちとその家族のために働いている人たちとの連帯を表明しています。

 

 心から共感します。

 

(M.H.)

 

ロシアがウクライナへ侵攻……。

 新聞の一面見出しに信じられない思いです。21世紀になって、ヨーロッパで隣国への全面的な侵攻が起きるとは……。

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 早く平和的に終息してほしい。ウクライナの人たちが昨日までふつうに生活していた土地に、爆弾が落ちるなんて……。ロシア兵だって、死にたくないだろうに……。やるなら、プーチン、お前、最前線に出ろよ、と言いたい。いや、そういうことじゃないのはわかってるけど。

 

 いちおう、少しはロシア語をかじったし、ソ連に行ったこともあるし、ロシア人の暖かさを感じたことのある人間としては悲しいとしか言いようがない。

 

 ロシアにしろ、中国にしろ、北朝鮮にしろ、独裁的な政権システムと独裁者の個人的保身が重なった時の危険性は、いつになったらなくなるのだろうか? 

 人類はいつまでたっても馬鹿なのか?

 

 今、いちばん懸念するのは、これに乗じて日本における、先制攻撃の正当化や憲法改悪の議論が高まること。

 それはちがう。

 

(M.H.)

 

 

 

『ぼくは川のように話す』ケイト・グリーナウェイ賞ロングリスト

 おかげさまで、『ぼくは川のように話す』は4刷が出て、すでに発売半年余りで1万部を超えました。たくさんの方に読んでもらってとても幸せです。

 今日は、某書店さんの依頼で、朝から訳者サイン。どんな読者さんの手に渡るのか楽しみ。

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第八回日本翻訳大賞、一次選考結果発表!

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第八回日本翻訳大賞 二次選考対象作品一覧 | 日本翻訳大賞 公式HP

 

 今年は(も)、全然読めてなくて、推薦もできなかった日本翻訳大賞ですが、一次選考を通過した15作品の訳者の中に、知り合いの訳者さんが三人も! うれしいかぎりです。

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フリーランサー

 30年余り勤めた進学塾を、先週ですっかりやめました。30歳すぎで、新卒で勤めていたメーカーをやめ、午後から勤務の塾の仕事に。最初は午前中、翻訳学校に通っていましたっけ。少しずつ翻訳の仕事をしながら、塾では常勤から非常勤、さらに、週2日、1日と、勤務時間を減らしてきました。周囲のみなさんや生徒たちに迷惑をかけながらの講師生活はおしまい。英語を教える資格がとてもあるとは言えなかった時期から、少しずつ知識を増やし、でも、やればやるほど足りないところがわかるばかりの毎日でした。

 生徒たちから教わることもとても多かった。だんだん、いくら先生づらしても、自分は年をとっているだけだとわかり、彼らとの上下関係や優劣の意識もいい意味で薄れていきました。最初は高圧的なほんとにひどい先生だったと思います。

 あまり意図的に選んだわけではない職業ですが、児童書やYAの読者対象者と日々接することができたのも幸運でした。英語のテキストを人に説明できるように読まなければならないことも、とてもためになりました。また、時折舞い込む講演の仕事や、毎週の勉強会にも塾での授業経験が生きています。結果的には、とても巡り合わせのいい仕事をさせてもらってきました。心からこうした幸運に感謝しています。

 

 去年はもう、週一回しか教えていなかったのだし、とっくにフリーランサーなのですが、まったく通勤しなくてよいと思うと、ちょっと心許ない気分にもなります。

 

 Freelancer。"lancer"は槍騎兵。フリーランサーとは、槍をもった自由騎士のことです。

 うん、そう考えると、ちょっと前向きになれるかな。明日は雪の予報なので、その前にと思い、また近所を鉄馬にまたがり「自由騎士」の気分を味わってきましたが、寒い……。

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(M.H.)

 

「おすすめ!世界の子どもの本」

 JBBY(日本国際児童図書評議会)から、「おすすめ!世界の子どもの本」の2021年版が送られてきました。一昨年2020年に日本で翻訳出版された子どもの本の中から、66冊が紹介されています。

 ほしい方は以下のリンク内にある、連絡先にコンタクトしてください、とのこと。

2021年版「おすすめ!世界の子どもの本」ができました | JBBYjbby.org

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 このブックレットはオールカラーで、おすすめ本の紹介のほかに、翻訳家の千葉茂樹さん、脇明子さんのエッセイ、野上暁さんによる、昨年亡くなられた翻訳家、神宮輝夫さんの業績についての文章と訳書リストが掲載されています。いやあ、このリストを見るだけでも、いかに偉大な方だったかがわかります。『ツバメ号とアマゾン号』は小学生時代に何度読んだことか!

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第八回日本翻訳大賞、推薦受付中

 今年も日本翻訳大賞の推薦時期がやってきました。相変わらず、まったく読めていないこの1年だったので、とにかく、推薦受付中であることをお知らせします。ひとりでも多くのみなさんが推薦されますように。

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推薦はこちら | 日本翻訳大賞 公式HP

 

ツイッターはこちら。

日本翻訳大賞(@nihonhonyakut)さん | Twitter


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「わたしは〇〇のように話す」

 先週の木曜日、所用があって神保町に行った際、「ブックハウスカフェ」さんにおじゃまして、訳書『ぼくは川のように話す』にサインしてきました。よろしかったら。

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(ブックハウスカフェさんのインスタから
https://www.instagram.com/p/CZBIQcop9Ie/ )

 

 なぜ「わたしは〇〇のように話す」と書いたかというと、

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『戦争と児童文学』(繁内理恵著、みすず書房)

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 著者の繁内さんは大阪府の公立図書館の職員で、2005年から「児童文学書評ブログ、おいしい本箱 book cafe」に書評を書いていらっしゃる方です。

【 児童文学書評 おいしい本箱 book cafe | 児童書・YA・絵本、もちろん大人の本もたくさん紹介します。】

 月刊「みすず」に連載されていた戦争と児童文学についての評論を一冊にまとめたのがこの本。

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今年もどうぞよろしく。

 塾の冬期講習、帰省して年越し、冬期講習残り、とばたばたしているうちに、年があけてしまいました。年賀状を出したつもりで出していない方がいるかもしれず、出したのに、また出してしまった方もいるかもしれず、失礼ご容赦ください。

 家内の実家がある愛媛に帰省していました。去年はコロナで帰れなかったので2年ぶり。オミクロンの流行しはじめる直前で、きわどかったですが、親戚のかわいい子どもたちにも会えてよかった。『バーナバスのだいだっそう』をおみやげにしましたが、果たして楽しんでくれるかどうか。

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 元旦。新居浜から見た石鎚山。西日本最高峰です。北に山がある神奈川で育った自分には、新居浜に行くと、南に山があるので角を曲がるたびに方向がわからなくなる……。

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