翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『ペーパーボーイ』最終回(翻訳勉強会2−15)

 月曜日は川越での勉強会でした。3月から課題として扱ってきた『ペーパーボーイ』ですが、3章まで進んだところでおしまい。次回から、別の課題に移ることにしました。

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 最終回は、第3章を全員見直してきて、あらかじめメールで原稿を共有、見比べながら、あれこれ話し合いました。

 そうすると、あちこちで気づかなかったことに気付かされます。すでに自分が訳して本になったものを読者のみなさんに買っていただいている身としては、今更こんなこと言ってどうするの、と思われるかもしれませんが、ほんとうに翻訳というのは奥が深い。こうして複数の人間であれこれ検討していると、翻訳に正解はないとは言いながら、一人の人間が限られた時間でやるのは、難しいことをさらに難しくしているような気がします。

 でも、複数の人間でやればいいかというと、そういうわけでもなく、全体のトーンや言葉の流れ方、スピード感などは、やはりだれか一人が責任をもって統一しなければなりません。なにより、その作品に対する思い入れのようなものがないと、200ページ、300ページの作品を仕上げることは難しいでしょう。

 

 ちなみに、今回、各メンバーの訳文は、一番短い方が10,070字、もっとも長い方が11,588字でした。(ルビや注、その他で、一概には比べられないのですが……。)みんなで検討してきた結果ですから、短いからといって訳し漏れがあるわけではありません。それぞれ訳者の個性が現われていて、おもしろい比較でした。

 あとで自分の原稿を調べたら、11,500字ほどでした。訳文が長めだということがわかります。前回も書きましたが、どうやらわたしは、そのまま訳してわかりにくいと思うと、かなり補って訳す傾向があるようです。

 

 勉強会は、次回、その次と、ロバート・コーミアのコラム集から2編を、ちょっとおもしろい趣向で扱う予定です。

 

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 (M.H.)