翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

物語詩

 詩の翻訳は、むずかしいけれどきらいではありません。いや、じつはけっこう好きです。訳し始めた本の冒頭に、作者の詩が引用されていました。訳しはじめると、これが夢中になります。言葉を選ぶ、行を調節する、リズムを整える……。

 ただ、詩の知識はほとんどないし、英語の韻を日本語に移すのは無理だと最初からあきらめているので、ひたすら日本語で読んだ時のリズムや心地よさ(時には不気味さ、恐ろしさ)、わかりやすさを考えて言葉をならべていきます。

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 訳し始めた作品とは別に、最近、写真の2冊が配達されました。いずれも、アメリカの作家の物語詩です。物語詩だということはあまり意識せずに注文したのですが、前後して届いたのでちょっとびっくり。どちらもヤングアダルト。そして、どちらも史実にインスパイアされた作品です。日本ではあまり物語詩というのは見ませんが、アメリカでは今もこうして新しい作品が出ているのですね。

 

"To Stay Alive" は19世紀の終わりころに、アメリカ東部から、新天地西部をめざして馬車の旅に出て、雪に閉ざされてしまう人たちを、一人の少女の視点で描いています。この少女は実在の人物でした。

"Caminar" のほうはフィクションですが、こちらは20世紀後半のグアテマラ内戦下での抵抗運動を、少年の目から描いた作品です。

 

 ああぁぁぁーっ、今気がついた! 作者、同じじゃん! うーむ……。注意力なさすぎ……。でも、きっとなんかシンパシーを感じたんだと思います。

 

 まだ、読み終えていませんが、ぱらぱらとページを見ているだけで心が騒ぎます。

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("Caminar" by Skila Brown, p.64-65, Candlewick Press, 2014)

 

 こういうのも翻訳したい。

 

(M.H.)