下の写真は、今翻訳中のYA作品、アイルランドの作家、ジョン・ボインが書いた、"My Brother's Name is Jessica" の表紙です。レインボーカラーですね。象徴的です。タイトルからもわかるように、「お兄さんがお姉さんだ」という、トランスジェンダー の話。主人公は、最初は受け入れられませんが、しだいに理解していきます。
ボインは自身がゲイだとカミングアウトしている作家ですが、厳格なカトリック教徒が多いアイルランドでは、保守的な社会規範の中、つらい幼少期から青年期を過ごしてきたと言います。しかし、そのアイルランドでさえ、2011年に同性カップルに婚姻と同等の権利を認め、2015年には同性婚を合法化しました。同性婚については、国民投票の結果による承認です。夫婦別姓も選択できます。
翻って日本では、自民党が憲法を改悪するのに国民投票をやろうとしていますし、先般の記者クラブでの党首討論会では、安倍首相一人が夫婦別姓に賛成の挙手をせず、ごちゃごちゃ言ってました。はっきりいって、今の日本の社会制度や経済慣行は遅れています。いや、世界から笑い者にされているいってもいいかもしれません。
自民党政権が長期化したせいで、日本のいろいろな制度やマインドが固定化し、変化に対応できなくなりつつあることが一番の問題なのです。世界の経済情勢の変化や科学技術の発展、思想や文化の多様化、環境の悪化など、変わってゆく周囲の条件にフレキシブルに対応するダイナミズムが自公政権にはまったくありません。
原発に固執し、効率化の名の下に労働者に過重労働を強い、トリクルダウンと称して大企業を優遇し、プラスチックストローの禁止には二の足を踏む……。一方で、風水力発電の推進を形骸化させ、専門職には残業の規制をなくし、もうけた人や企業には税率を優遇しています。すべてが現状の延命、つまり既得権益者の保護以外のなにものでもありません。
また、官僚機構が政権と一体化し、政権交代を恐れていることは想像に難くありません。記録の改ざんや隠蔽は、もう限界まで来ています。総理官邸の来館者記録を即日廃棄? ありえないでしょう。一国の指導者のもとにだれが訪れたのか、記録がないなどという国はおかしい、というか、恐ろしいとしか言いようがありません。
アメリカのように政権交代が起こる可能性が高い国では、官僚のトップまでも入れ替わりますから記録は必須です。それにともなう混乱は、民主主義のコストなのです。翻って日本は、一時の民主党政権の時にかいま見えたように、官僚機構は自らのトップである大臣にさえ情報を提供しなかったりして、抵抗しました。
組織ややり方を、合理的に、民主的に、環境に配慮して変えていく。企業や個人は働き方や働く場所を変えていっても損をしない。つまり、変わることが不利益にならない、そういう方向に政治が向かなければこの国はジリ貧です。60歳を過ぎたわたしはなんとかやっていけるでしょうが、若い人たちはどうでしょう?
あ、そうだ。翻訳者としては、現政権のいわゆる実学重視、結果を求める教育改革にも大反対。深い教養のない経営者がどんな商売をするかは、少し考えればわかるでしょう。長い目でみた研究者の養成や、語学文学教育への援助は、資源の乏しい日本には不可欠の政策です。今まで、人が資源だと言ってきたではありませんか。
というわけで、21日の参院選では、今の政権を変えるのに一番近い選択を考えて投票したいと思います。
(M.H.)