翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『ペーパーボーイ』書評

 今朝(2016年9月24日)の朝日新聞朝刊の書評欄「子どもの本棚」で、『ペーパーボーイ』をとりあげていただきました。

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 選者は、松本の子どもの本の店「ちいさいおうち書店」の店長、越高一夫さんです。ありがとうございます。

www.chiisaiouchihon.jp

 この書店、前から気になっているお店ですが、松本なので、なかなか行けません。今度ツーリングがてら行ってくるかな。松本は、もうずいぶん行ってない。地図を見ると、信州大学のそばにあります。夏に、この春、信州大の医学部に入った塾の生徒が遊びにきていました。松本、まだ冬はすごしていないけれど、いいところだ、と言ってました。

 

 あ、『ペーパーボーイ』よろしくお願いします!

 

 冒頭を、少しだけ。

人が刺されたあの事件のことをこうしてタイプライターで打っているのにはわけがある。ぼくはしゃべれない。

どもらずには。

それにマームに約束したんだ。ぼくの黄色い柄の二つ折りのナイフになにがあったのかだれにも言わないって。マームはタイプライターで打つのは約束破りだと言うかもしれない。でもあれはすべて本当にあったことだと納得するためには紙の上に言葉をならべる必要がある。言葉は宙にあるより紙の上にあるほうがずっと信用できる。

 (『ペーパーボーイ』p.7より)

 

 読点「、」がないのがわかりますか? 主人公は吃音者なのですが、タイプで文を打つ時に、コンマを打つと、そこで息継ぎをして次の言葉が出にくくなるから、コンマがきらい、という設定なのです。そこで、日本語版でも読点なしに挑戦しました。これで全編やってます。案外できるものです。

 原作者のヴィンス・ヴォーターさんは新聞社を退職した方ですが、やはり吃音者です。子どものころの体験をこの作品に注ぎこんだそうです。これが初めて書いた小説とは思えない完成度。

「人が刺された事件」って、すごく気になるでしょう?

 

 ぜひ!

 

(M.H.)