『兄の名は、ジェシカ』(ジョン・ボイン作、拙訳、あすなろ書房)が、第67回読書感想文の高校の部の課題図書に選定されました。去年の『キャパとゲルダ』に続いて、今年もたくさんの高校生に読んでもらう機会ができてとてもうれしい。
このお話、イギリスが舞台で、主人公のサムは14歳。サムは17歳の兄ジェイソンが大好きなのですが、そのジェイソンが、ある日、自分は女性なんだと思う、と言い出します。首相候補の母親とその秘書を務める父親はおおあわて。サムも、ヒーローだった兄の告白を信じたくありません。
ドタバタ劇のような軽妙なタッチで、身近な人のカミングアウトをどう受け止めればいいか悩む主人公の気持ちが描かれてゆきます。『縞模様のパジャマの少年』で一躍注目された原作者のジョン・ボインですが、自身がゲイで子どものころに悩んだ経験があります。今回は、実際にトランスジェンダーの人に取材をしながら、この作品を書き上げたそう。
ジョン・ボインは、どこか演劇のような小説を書く作家で、『縞模様……』、そして、拙訳『ヒトラーと暮らした少年』が悲劇だとすれば、本作品は悲喜劇と言えばいいでしょうか。
あと、この装幀、大好きです。ブックデザインは城所潤さんと大谷浩介さん、イラストは一乗ひかるさん。ポニーテールの後ろ姿がかっこいい! この絵は、中を読むと、また一段と味わい深いですよ。
公式サイトはこちら。感想文を書きたくない人も、書かなくていい人も、ぜひ、この機会に!
(M.H.)