立川の PLAY MUSEUM でひらかれている、「エルマーのぼうけん展」に行ってきました。シリーズ三作の原画がたくさん! というか、ぜんぶ??
小学生の時になんども読んだ本の世界が、上手に再現されていました。10月1日までです。ぜひ!
それに先立って、月曜日の古典児童書を読む会の課題本も、エルマー三部作でした。参加者それぞれの思い出や、好きな巻とその理由などで、もりあがりました。わたしが好きだったのは3巻め。
ひとことで言えば「傑作」ですね。文と絵と翻訳のバランスもいい。あまり意識していなかったのですが、文を書いたのはルース・スタイルス・ガネット、絵を描いたのは、そのガネットさんの父親の再婚相手のルース・クリスマン・ガネット。展示には、挿絵を描くために作られた、脚が自在に動く竜のぬいぐるみも展示されていました。
絵は細密な鉛筆画(と展示には書いてありましたが、Wikipedia では、grease crayon と書いてあります。)で、かなり小さくておどろきました。そのままの大きさで使われたのでしょうか。展覧会では写真撮り放題だったので、たくさん撮ってきました。
翻訳は、わたなべしげおさん。今読んでも違和感のない、わかりやすい、でも、楽しい訳文です。
今回の読書会でわかったおもしろいこと。
その1
そらいろ高原の洞窟の入り口に生えているのはキンギョソウです。わたしは、この本でキンギョソウを知りました。原文はどうなっているか調べたら(『エルマーのぼうけん』の原書はグーテンベルグに挿絵もぜんぶ載っていますから、だれでも、ただで読めます)、snap dragon でした。キンギョソウの花をつんで手にもち、うまくあやつると、竜の口のようにぱくぱく動かせるのだそうです。なるほど。
その2
『エルマーのぼうけん』の原作のタイトルは、"My Father's Dragon" です。そして、本文中には、Elmer という名前はたぶん4回しか出てきません。エルマーの息子が語っているという体裁なので、地の文ではいつも、my father ...... という表記なのです。"Elmer" というのは、だれかがエルマーを呼ぶ時に出てくるだけ。
でも、翻訳の渡辺茂男さんは、その my father を「ぼくのお父さん」と訳したのは冒頭だけで、あとは「エルマー」と訳しているのです。わたしも、これでよかったのだと思います。「ぼくのお父さん」と訳していたら、読者は主人公の気持ちに入り込めていなかったでしょう。でも、英語圏の読者はどう思っているのでしょうか。
その3
『エルマーと16ぴきのりゅう』の見返しには、カラーの地図がありますが、日本語版は、なんらかの事情で、発売後しばらく別の絵が使われていました。当時福音館にいらっしゃった、精密な動物画で知られるヤブさん、こと薮内正幸さんが描いたものが使われていたのだそうです。
そう言えば、最近の版で見たガネットさんの描いた地図は、とんがりさんみゃくが上下にならんでいますが、
(これが原画です。)
ヤブさんが描いた地図は、さんみゃくが左右にならんでいて、上にそらいろこうげん、下に町が描かれています。わたしが幼い頃にもっていた本はそれでした。こんなこともあるんですね。
思うことはたくさんありますが、このあたりで。
とても楽しい展示です。みなさんもぜひ。これ(↓)がもらえます。これは、時期によって(?)何種類かあるそうです。
(M.H.)