登場人物が小さな緑色のびんの中身を少量手のひらに出し、その手で顔や首筋を軽くたたきはじめます。そして、「Lilac de France。せまい船室では世界でもっともすぐれた解毒剤だよ」とのたまうのです。
これ、なんですかね?
このおじさん、もと船乗りです。たぶん、フランス製のライラックの香りつきのオーデコロンじゃないかと思うんですよね。調べていくと、「Lilas de France」という商標はアメリカでも登録されていて、上の写真の図柄です。オーデコロンやタルカムパウダー、アフターシェーブローションなんかもあります。
でもよく見ると、「Lilac」じゃなくて「Lilas」になっています。仏和辞典をひくと、lilac はなくて、lilas 。「ライラック」じゃなくて「リラ」ですね。逆に英和辞典には lilac 「ライラック」しか載っていない。ということは、この人は「ライラック・ドゥ・フランス」と言っているわけで、英語とフランス語のちゃんぽんになっています。世界中をまたにかけてきた船乗りなので、いろいろな国の言葉を少しずつしゃべれるのでしょうが、さて、翻訳ではどうするか? フランス語らしく、「リラ・ドゥ・フランス」とするか、それとも、このまま「ライラック・ドゥ・フランス」とするか? うーん、悩ましい。しかも、このままだと日本の中高生にはわからないので、なんらかの工夫がいるでしょう。「フランスのライラックの香りのオーデコロン」と説明するか?
それはともかく、オーデコロンとコロンと香水のちがいとか、タルカムパウダーとか、商標とか調べているうちにあっという間に一時間以上たっていました。うーん、めんどくさい。でも、おもしろい……。
ところで、幼いころ住んでいた家の庭にはリラの木がありました。わが家では、ライラックではなくて、リラと言っていました。幼稚園の時、母がその紫色の花を切って、園にもたせてくれていました。女性に花を贈る習慣づけだったのか? いや、そんなことはないと思うのですが……。 鹿島先生、お元気でしょうか?
先日、墓参りの時に幼稚園の前を通りかかると、敷地内のカトリック教会がこんなにりっぱに! 幼稚園の話はまた、次の機会に。
(M.H.)