翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『飛行士と星の王子さま ── サン=テグジュペリの生涯』

 アマゾンその他のネット書店で予約受付が始まりましたので、拙訳の新刊をご紹介させてください。8月に発売予定の絵本です。

 国際アンデルセン賞作家であり、世界中にファンが多いピーター・シスの手になる、サン=テグジュペリの生涯を描いた伝記絵本です。

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Amazon.co.jp: 飛行士と星の王子さま: サン=テグジュペリの生涯 (児童書): ピーター・シス, 原田勝: 本

  シスの絵は、細かい描きこみと大胆な構図という、一見ミスマッチにも思える手法で、落ち着きのある、やさしい雰囲気を保ったまま、中身のつまった「緻密なダイナミックさ」とでも言うべき画面を生み出します。

 今回も、そのシス・ワールドがご覧いただけます。サン=テグジュペリは、どうしても『星の王子さま』の作者というイメージが強いのですが、じつは、飛行機の黎明期に開拓者的なパイロットとして名を馳せ、さらに、空の上から地上の人々を想い、『人間の大地』や『夜間飛行』、『戦う操縦士』といった「飛行文学」という独特の作品群を生み出した作家でもあります。

 原題の "The Pilot and the Little Prince" というタイトルにも、それははっきりと現われていますね。作者のピーター・シスは、チェコスロバキアの生まれで、東西冷戦下にアメリカに亡命し、ニューヨークで絵本作家としての活動を展開します。じつは、サン=テグジュペリも、第二次大戦下、占領下のフランスを逃れてニューヨークへわたり、『星の王子さま』もそこで書いたものということもあり、シスはサン=テグジュペリに大いにシンパシーを感じて、この作品を描いたようです。

 

 サン=テグジュペリの伝記は何種類か邦訳もありますが、大空や飛行に憧れつづけ、飛行機に乗ったまま死んでいった、パイロットとしての、そして、空から人々を描きつづけた作家としてのサン=テグジュペリを知りたければ、ぜひ、この作品を手にとってほしいと思います。(M.H.)