翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『星の使者』22年

 ガリレオの生涯を描いたピーター・シス原作の絵本、『星の使者』が重版になり、見本がとどきました。1997年初版なので、22年目です。9刷、累計2万部弱ですが、長く読まれて新しい読者がついてくれることがとてもうれしい。

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 ちょっぴり中をご紹介。ガリレオは、初めて望遠鏡で月を見た人なのですが、その月を模写した絵を、シスがさらに模写して彩色したのがこのページの月面の絵です。ガリレオの著書『星界の使者』(『星界の報告』とも)に、彼が実際に書いた絵が載っているのですが、シスはそれを忠実に再現しています。ガリレオの『星界の使者』は英訳では "Starry Messenger"。そして、この絵本の原題も同じ、"Starry Messenger" です。

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 この絵本、文字はすべて、ルビまでも(!)、大川修さんの手書きなんですよお。すごいですよねえ。翻訳した時は、大川さんに書いてもらったあとでは直せないぞ、ということで、慎重に編集者さんと何度も見直してからお願いしたことを憶えています。

 

 この奥付(というか、先付、というか)にある、シスの絵も好きです。

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 先日出版された訳書『夢見る人』に挿絵を描いているのが、やはりピーター・シス。20年以上前に知り合った(?)シスの作品を、今年も訳せて幸せです。挿絵のタッチは、彩色されていない分、少し異なりますが、やはりシスならではのもの。こちらもどうぞよろしく。

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 ああ、ところで、シスが描いた(書いた)絵本は伝記ものが多くて、上のガリレオに始まり、コロンブス、ダーウィン、サンテグジュペリなどを描いています。『夢見る人』は詩人パブロ・ネルーダの子ども時代を描いたもの。パム・ムニョス・ライアンのやわらかな文章や挿入詩もすばらしいです。巻末にはネルーダの詩も入っています。どうぞよろしく。

 

(M.H.)