昨日は、川越の絵本カフェ「イングリッシュブルーベル(Ehon Cafe - English Bluebell -」さん)でひらいている古典児童書を読む会がありました。課題図書はアラン・ガーナーの『ふくろう模様の皿(The Owl Service)』(神宮輝夫訳、評論社)。
ウェールズの伝承文学『マビノギオン』を下敷きにした現実とファンタジーが入り混じった作品です。いつも、この読書会では、一人ずつ順に感想を述べていくのですが、昨日は人数が少ないこともあり、自由に発言する形になりました。というのも、とても複雑な語りの作品なので、一度さらっと読んだだけではよくわからないところがたくさんあって、皆さん、まずはそういう疑問の解消から入ったからです。おかげで多少理解は深まりましたが、もう一度、二度読まないと、わたしには細かいところはわかっていません。
いくつか理由があります。ひとつは、語りが一人の視点に統一されていないこと。会話のやりとりで展開する場面が多く、客観的な事実が必ずしも積み上がっていかないこと。前提となるマビノギオンを知らないと、この物語との相似形の構造が見えてこないこと。現実的な設定の中に不可思議なことが起きるファンタジーであること。などなど、あげていけばキリがないくらい不確定要素が多いのです。
部分的に二度読みましたが、確かに二度目の方が繋がりが理解できます。一見不自然でも言葉ひとつひとつの意味がちゃんとあるのですが、それが一度ではわかりにくい。翻訳についていえば、神宮さんの訳なのですから、おそらく原文と付き合わせれば正確なのでしょうが、なにせこういう作品なので、もう少しガイドを添えてわかりやすく訳せるのではないかという気もしました。
というわけで、中身のことは語る自信がありません。原作は1967年、翻訳は昭和47年ですから、1972年ですね。2010年発行の10何刷りだかの版を持っている方がいましたから、今も読まれています。しかし、こんな複雑な本を中高生が読めるのか、と思いましたが、中にはいるらしいです。ネット検索をすると、若いころにこの本にはまって、その後、舞台となったウェールズを訪れている日本の読者もいるとか。
もしかしたら近ごろは、一度読んだだけではわからないものは出版社が敬遠しているだけで、じつは、いい作品であれば読者はついてくるという証拠なのかもしれません。でも、もう一度読むのはちょっとしんどいかなあ。
次回の課題は『くまのパディントン』。ほっとしてます(笑)。
この日は、オレンジ入りのホットワインをいただきました。おいしかった。
(M.H.)