翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

鈴木啓太、引退記念試合

 17日(月)、埼スタで行われた啓太の引退試合は、とても幸せな90分プラスアルファだった。

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 啓太は、レッズがJ2に落ちた年に入団して浦和一筋、自分がレッズサポになってから活躍や失意や決断を見守ってきた選手だ。

  静岡出身のJリーガーなのだから、下手なわけはないのだが、やはりプロのレベルではキックは上手とは言えなかった。しかし、サッカーは90分のうちボールに触れるのは3分とも言われるスポーツ。運動量とクレバーなポジショニングで、オシムからは「水を運ぶ人」と言われ、日本代表にも選ばれた。けれど、人選や病気などでオリンピックもワールドカップも本戦には出ていない。それだけに、レッズサポは啓太のことがよけいに好きだった。

 さぼらない、おごらない、常に笑顔を絶やさず、サポーターから愛される選手だった。

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 前半は日本代表経験者たちのチームで、後半はレッズ・レジェンズと称した浦和OBチームで90分出場した啓太。後半開始の浦和OBのメンツには鳥肌がたった。都築、闘莉王、坪井、ネネ、平川、啓太、伸二、三都主、永井、ポンテ、ワシントン。ベンチにはギドとエンゲルス。ヤマがいないのは残念だが、言わずと知れた、ACL制覇のメンバーだ。よくもまあ、世界中から集まってくれたものだ。腹の出た選手も多かったが、それぞれ特徴を出してのプレーは、当時のワクワク感を蘇らせてくれた。

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(どうだ、この豪華メンバーは! あ、そうそう、マリッチも元気だったぞ。)

 

 今の浦和は、ミシャの構想とフォーメーションの上に成り立っているが、当時のギドのチームは、選手の個性の上に成り立ったチームだった。このメンバーで、啓太が果たしたバランサーの役割は非常に大きい。資金をうまく使えば、こういうチームをまた編成できるはずだ。

 

 試合後、セレモニーがあり、その後、啓太はゴール裏へ上がってきた。この日は、角田氏がコールリーダーを務め、懐かしいコールがテンポよく続き、おおいに盛り上がった。角さんは、これで本当に終わりらしい。うーん、惜しいな。今のリーダーも大変だろうが(この前の、ウイダイ歌う、歌わない、もあったし……)、ロートルサポとしては、暖かく見守りたいところ。なんだかんだいって、ゴール裏の応援は浦和の生命線なのだから。 

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 いい年をして、土砂降りでもサッカーの試合を見に行って、声を張り上げたり、ユニフォームやシーズンチケットを買ったりしていると、時々、ふっと、何のためにこんなことしてるんだろう、と思うことがなくもない。でも、こういう試合を見にいくと、ああ、サッカーは、スポーツは、いいなあ、と思う。

 たとえば、鈴木啓太というアスリートを、いや人間を追い、彼の立ち居振る舞いを見続けてきたことは、下手な小説を読むよりも、よっぽど多くの感動と教訓を得ることができるのだから。

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(M.H.)