翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

装幀家、城所潤さん講演会

    25日水曜日、JBBY主催の城所潤さんの講演会に行ってきました。

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 城所さんは、主に子どもの本の装幀を手がけていらっしゃるので、わたしの訳した本も何冊か装幀していただいています。最新作の『オオカミを森へ』もそうです。

 カバーは、ほぼイギリスのペーパーバック版を踏襲しているのですが、中身は城所さんのデザインです。冬のロシアの話なので、雪のイメージですね。とても上品な仕上がりです。

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 花布(はなぎれ)を改めて見てみると、やっぱり、というか、当然というか、赤でした。ほら、主人公フェオのマントの色です! こういうのがうれしいんだよなあ。

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 中身もちょっぴり。今回は、ジェルレヴ・オンビーコさんの挿絵と城所さんの装幀で、ビジュアルもきれいな本になって、とてもうれしいです。紙の本を手元におきたい、と思わせるためには装幀の力は大きい。

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 『フェリックスとゼルダ』も城所さんの装幀。アウシュビッツの話なのに、このさわやかな色使い。

 フェリックスとゼルダ

 でもよく見ると収容所に続く線路なわけで、初めて見た時にはビックリしました。もちろん、これは手にとって読んでもらわないと始まらない、という、本の装幀の使命というか、機能をまっとうするための作戦であるわけです。

 講座では、もっとアーティスティックな話がうかがえるかと思ったら、とてもリアリスティックな話で、少し意外でした。編集者向けの講座だったからですが、内容の評価はとりあえず置いておいて、とにかくどうすれば売れるか、ということを突き詰めていく姿勢がよくわかりました。

  でもね、でもやっぱり、結果としてできあがった城所さん装幀の本は美しいのです。そこは機能美だけでなく、やっぱり本への愛情がこもっているからなんだと思います。講演会のあとの飲み会にもお邪魔したのですが、いろいろお話が聞けて、とても楽しかった。ありがとうございました。

 

 城所さん、これからもよろしくお願いします。

フェリックスとゼルダ その後

 

(M.H.)