第二回日本翻訳大賞の二次選考結果が発表されました。詳しくはこちらを。
( 第二回日本翻訳大賞最終選考候補作品besttranslationaward.wordpress.com )
興味深いのは、その多国籍感。
『出身国』の作者ドミトリィ・バーキンは旧ウクライナ生まれのたぶんロシア人。訳者は秋草俊一郎さん。
『素晴らしきソリボ』のパトリック・シャモワゾーはフランス人で、カリブ海のフランス領マルティニーク島に住んでるらしい。訳者は関口涼子さんとパトリック・オノレさん。
『パールストリートのクレイジー女たち』のトレヴェニアンはアメリカ人。訳者は江國香織さん。
『歩道橋の魔術師』の作者は台湾の呉明益。訳者は天野健太郎さん。
『ムシェ 小さな英雄の物語』のキルメン・ウリベはバスク人。訳者は金子奈美さん。
五作すべてが異なる言語からの翻訳です。意図的ではないでしょうが、昨年の受賞作二作がチェコ語と韓国語からの翻訳だったことを考えると、この流れが続くのかもしれせんね。いいことだと思います。
専攻語のロシヤ語をマスターどころか、片言もあやしい状態で卒業してしまった外大生としては複雑な気持ちにもなりますが、英語圏の文学がインフレ気味なので、歓迎すべき方向です。審査員の皆さんは、原語が何かではなく、翻訳の出来で評価していると思いますから、その結果がこの多言語の作品群になったのは素晴らしいこと。
ぜひ、この中から何冊かは読んでみようと思います。詳しくは存じあげませんが、訳者の皆さんも、作家、詩人、研究者と多彩です。とくにその言語や文学の研究者の方の翻訳は、当該言語や文化への深い知見に裏づけられているでしょうし、同時に文学として評価されることが、日本の翻訳界にとって意義のあることだと思います。とくに、昨年の『エウロペアナ』の篠原さんや、今回『ムシェ 小さな英雄の物語』で候補の金子さんが東京外大の研究者でもあることは、OBのはしくれとしても、とても誇らしいことです。
まずは中間報告会が4月1日に代官山蔦屋であります。行きたいけれど、この日は金曜日なのに、ACLがらみでリーグ戦が埼スタで……。
受賞作の発表は4月11日、授賞式は4月24日、日比谷図書文化館で行われるそうです。
関係者の皆さんは大変でしょうが、毎年、こういうイベントがあると思うとほんとうにうれしい。なんとか来年以降も続いていってほしい。
(M.H.)