翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

JBBY新・編集者講座 広松健児さん

 先週の木曜日、JBBY新・編集者講座 第8期第3回「こんなことを考えながら、子どもの本を作ってきた」で、偕成社の広松健児さんの講座を拝聴しました。おもしろかった、というか、ためになりました。広松さんは、『ぼくは川のように話す』の担当編集者さんだったので、とても丁寧な本作りをされる方だなあ、という印象があったのですが、それを裏付けるような講座でした。

 翻訳絵本の場合、すでに絵やページの構成などは原書があるので、訳文とその書体や大きさや配置、タイトル、全体の構成の一部しかいじれないのですが、それでも、広松さんとの仕事はとても楽しかったし、安心して進めていけました。

 

 この講座では創作絵本をとりあげていたので、その何倍もの時間と労力をかけての絵本作りが垣間見え、身が引き締まる思いでした。学生時代から、絵本や子どもの本とむきあってきた広松さんの幅広い知識と、本作りへの熱い思いが伝わってきました。

 今回の講座でとりあげられていて、とくに印象に残ったのが、下の『ウマと話すための7つのひみつ』(偕成社、2022年)です。与那国島で暮らしている作者の河田桟さんと、この島にいるほぼ野性の馬たちとの交流から生まれた、まさしく「ウマと話すための」本。絵もいいし、文章もいい。

 わたしには、とくに馬と話す予定もつもりもないのですが、この本を読み、ながめていると、とてもおだやかな気持ちになってきます。そして、馬の仕草を見ながら少しずつコミュニケーションをとる方法の絵入り解説を読みながら、そうだよ、人間同士のコミュニケーションだって、本来、これくらいナイーブなもので、心を通わせるには少しずつ時間をかけてすべきものなんだよ、と言われている気がしました。言葉が通じるからって、人間同士もそんなにたやすくわかりあえたり、信用できたりするはずもありません。忘れがちですが、大事なことです。

 

 広松さんが与那国島に行った時のお話は、偕成社のサイトで読めます。ぜひ。

【 https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/s/editor/edt221012/ 】

 

 

 あ、わたしの次の絵本も広松さんとのお仕事。いい作品に仕上げたい。がんばります。

 

(M.H.)