『ちいさな労働者』("Kids at Work")を読みました。
- (作者: ラッセル・フリードマン,Russell Freedman,ルイス・ハイン,千葉茂樹、あすなろ書房、1996/10)
いい本です。20世紀前半、アメリカの各地の工場や炭坑、農地で働かされていた子どもたちの写真と、それを写した写真家ルイス・ハインの生涯を綴った写真入りの本です。版元のあすなろ書房の山浦さんから何度かうかがったことがあったので、ずっと気になっていました。写真がいいですね。過酷な労働現場に立つ子どもたちのちいさな姿は、かわいそうですが、でも、それぞれ、どこか凛としています。彼らの労働で潤っていた大人たちにむかう無言のメッセージを感じました。
アメリカでは、そして日本でも、こうした過酷な児童労働は少なくなりましたが、貧困のしわ寄せが子どもたちに行くことは、最近、また多くなっているように思います。そして、世界のほかの国々では、多くの子どもたちが労働現場のみならず、戦場にも駆り出されています。また、シリア難民の映像を見ても子どもたちのことが心配になりますが、ハインは、ヨーロッパからニューヨークに着いたばかりの移民の子どもたちも撮影していました。
日本では、1996年に出版され、わたしが買ったものは、2012年の第12刷です。版を重ねているのは、この本が優れた本であるからですが、一方で、子どもたちの窮状が、世界規模で見れば、20年たった今もなんら変わっていないことの証でもあります。
ネットで原書の書影を見ましたが、日本版よりも少し大きくて、表紙の写真も異なります。わたしは、日本版のまっすぐに見つめてくる少女の写真のほうがいいと思いました。
(M.H.)