翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

新刊『ブライアン・スティーヴンソン』

 あすなろ書房の「信念は社会を変えた!」シリーズの新刊です。来週火曜日、11月17日発売予定。アメリカの法廷弁護士で、黒人の冤罪裁判を多く扱っている、ブライアン・スティーヴンソンのインタビュー集です。

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  先日紹介した、『ネルソン・マンデラ』と同じシリーズの1冊。

 あと2冊、ステフィン・カリー、グロリア・ステイネムの巻が同時に出ますので、これで6冊のシリーズ。マンデラ、そしてRBGが亡くなってしまいましたが、あとの4人は現役ですね。マンデラとスティーヴンソンの翻訳はわたしですが、ほかの4冊は、橋本恵さんの訳。

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 スティーヴンソンは、黒人の冤罪を晴らす裁判を多く扱っている弁護士で、〈司法の公正構想〉という組織の代表者です。先頃の Black Lives Matter の運動で、ご存知の方も多いと思いますが、アメリカではさまざまな理由で黒人の逮捕率が高く、そこには、警察の人種差別的な意識にもとづく先入観が大きく関わっており、冤罪も多いのが実情です。

 スティーヴンソンの自伝『黒い司法』をもとにした映画の中で、冤罪による逮捕、裁判、投獄、そしてスティーヴンソンらの努力による、逆転無罪、釈放までの経緯が描かれていますが、これを見ていたおかげで、アメリカのBLMの運動の切実さがとてもよくわかりました。

 

『黒い司法』は映画としてもとてもよくできていて、スティーヴンソン役のマイケル・B・ジョーダンもさることながら、冤罪で死刑判決を受けた男を演じたジェイミー・フォックスや、死刑場面を迫真の演技で演じたロブ・モーガンがすばらしい。しかも、それがすべて実話だと思うと……。

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 じつは、この『ブライアン・スティーヴンソン』を訳すことになった理由のひとつは、昨年の「はじめての海外文学」のプレイベントで、『黒い司法』の訳者、宮崎真紀さんとご一緒したことでした。ちょうど映画が封切られたころで、宮崎さんが熱心にこの自伝のことを語ってくださったのです。

 その後しばらくして、今回の「信念は社会を変えた!」のシリーズの話があり、「マンデラ」のほかに、もう一冊訳しませんか、という声をかけていただき、迷わず「ブライアン・スティーヴンソン」を選びました。なんだか、こうして作品や仕事や人がつながっていくのは、とてもうれしい。

 

 今回も、勉強会の仲間の小宮由紀さんにファクト・チェックや訳文のチェックをしてもらいました。もうノンフィクションは一人で訳すのは無理かも、と思います。ほんと、一人だと、ぜったいに勘違いやもれが出てしまいますから。

 

 

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(M.H.)