翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

シドニー・スミス特集@雑誌「イラストレーション」

 隔月刊誌「イラストレーション」の2025年7月号に、シドニー・スミスの特集が載っています。これ、ファンは必読・必見です。全20ページ!

 

 主な作品の特徴や構図・構成、彼が用いている技法を写真入りで解説。『おはなをあげる』から始まって、『うみべのまちで』、『この まちの どこかに』、『ぼくは川のように話す』、『おばあちゃんのにわ』、『ねえ、おぼえてる?』、そして最新刊の『あらしの島で』をとりあげている。

 一昨年の、板橋区立美術館の「夏のアトリエ」の紹介や、編集者の広松健児さん、Titleの店主、辻山良雄さん、イラストレーターの岡田千晶さんの寄稿文、最近の講演録も。

 今のところ、これだけまとまったシドニー・スミス論はほかにないんじゃないだろうか。

 

 ひとつ、この先だれかにやってほしいことは、テキストと絵の関係性。シドニー自身がテキストを書いている『このまちのどこかに』と『ねえ、おぼえてる?』は、自分でやりたいように全体の構成を決められたはずだが、ほかの作品にはみな、先にテキストを書いた作家がいる。そのテキストから、どうやって絵本という三次元のものにしていくのかは興味がある。

『おばあちゃんのにわ』では、ベッドの上のおばあちゃんとぼくのシーンで、作者と相談して、文章を省いたページがあるのは知っているが、ほかの作品ではどうなんだろうか?

 新作の『あらしの島で』を訳すのはほんとうに苦労したが、われわれ訳者は、あくまでもすでに絵本になっているものを見ながら、テキストを訳すしかない。当然、そのページの絵との調和や、絵によって表現されているものをどこまで文章でも訳すか、あるいは訳さないか、などと、いわば逆算を強いられる。言ってみれば、「原文テキスト+絵」という元の順序を、「絵+訳文テキスト」というようにも考えなければならない。絵や構成はもう変えようがないからだ。

 でも、当然、訳そうとすると、「原文テキスト→訳文テキスト」というプロセスでまずは考えようとするわけで、そこから出てきた訳文は、使えないことがあり、でも、原作者はこう書いているんだから、絵本作家がこういう絵をつけてしまったので、ちょっとちがうんじゃないか、いや、もう絵は変えられないんだから……、などという葛藤が起きる。

 きっと、絵本の翻訳をしたことがある人は、みんな同じような経験をしているはずだ。

 

(M.H.)