翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『独裁政治とは?』

『独裁政治とは?』(文・プランテルグループ、絵・ミケル・カサル、訳・宇野和美、あかね書房、2019)を読みました。

 スペインでフランコ独裁政権が倒されたあと、1977年に出た本のテキストに、新しくイラストをつけた絵本で、2016年ボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門最優秀賞受賞作。

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 昨年訳した『キャパとゲルダ ふたりの戦場カメラマン』でスペイン内戦のことを少しかじったので、その後のフランコ独裁、そして、その後の民主化が少し身近に感じられていたところでした。

   訳者の宇野和美さんのお仕事はいつも気になるので、この本も読みたいと思っていました。岡山の「スロウな本屋」さんのツイッターに紹介されていて、思い出し、取り寄せました。

【 スロウな本屋 

 

 独裁者とはどういう振る舞いをするものか、ということを、わかりやすく描いた絵本です。コミカルでポップな絵面ですが、今の日本人にはとてもじゃないが、笑えないところが数々。ノンブルがないので、引用ページが示せませんが、少しだけご紹介。

 

 ○○○は「独裁者」ですが、好きな言葉を入れてお楽しみください。

 

「それに、○○○は、なかまには気前よく、

 賞をあたえたり、土地をプレゼントしたりする。

 ときには、自分のものではないものまで、あげてしまう。」

 わお!

「……、考えれば、もちろん、たくさんのことに気づいていく。

 ○○○がそれほどゆうかんではないことに気づき、……」

  (記者会見 質問は うけつけない)

  うーむ。

「かしこくもなければ、公平でもないことに気づく。」

  (「ゲンゴドウダンだ!(←○○○のせりふ)」)
    (正しくは「ゴンゴドウダン 言語道断」(←訳注))

 はいはい。

 

 宇野さん、「言語道断」、原文がどうなっているのか知りませんけれど、うまい!

 と、笑っていられるうちが花だと思います。

 シリーズの名称は「あしたのための本」です。いいシリーズ名です。

 

 

 同シリーズはあと3冊。

『民主主義は誰のもの?』『社会格差はどこから?』『女と男のちがいって?』

 集めようと思います。

 

(M.H.)