翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

読書会『グリーン・ノウのお客さま』

 昨日は、川越のイングリッシュブルーベルさんで、古典児童書を読む会でした。課題本はルーシー・ボストンの『グリーン・ノウのお客さま』。

 おやつは、主人公の少年ピンが、ゴリラのハンノーに食べられてしまうようなサンドイッチ。店主のKさんが焼いたパン。おいしかった。バイクだったので、ワインが飲めなかったのが残念。

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  グリーン・ノウは、第1巻の「子どもたち」を読んだ記憶はあるのですが、なんだか、「トムは真夜中の庭で」あたりと記憶がごちゃごちゃになっています。

 この「お客さま」は、ゴリラのハンノーと、中国系の難民の男の子ピンとの交流の物語です。どうしてこういう設定にしたのか、不思議な気もしますが、ピンとハンノーの孤独感が重なり、彼らの心の通い合いはぐっとくるのですが、ハンノーの最期を考えると、とてもさみしくも思えます。

 すばらしいのは、作品の構成と細かい描写を積み上げ、しだいにスピード感を増してクライマックスへと進んで行くこと。ゴリラの生態を調べて書いたのだと思いますが、息子さんの挿絵もあいまって、ハンノーの存在感は抜群です。とても個性的な児童文学だと思いますが、たぶん、一度では読み落としているところがたくさんあるように思います。シリーズのほかの巻も読んでみないといけません。宿題がたまるばかりです。

 原作者のルーシー・ボストンさんが第1作の「子どもたち」を書いたのが、62歳の時。そこから作家活動に入ったそうです。わたしも62歳。ちょっと小説を書くのは無理だと思いますが、これからだな、と改めて思いました。

 Kさんにも言われましたが、こういう深みのある作品を翻訳したいものですが、まあ、そうざらにあるわけではなく、わたしなりにがんばってるつもりなのですが……。でも、いい作品をさがしたいですね。今回の読書は、こういうクオリティの児童文学があるのだという物差しが、ひとつ増えたような気がします。

 

 あ、最後にKさんから教えてもらいましたが、先日、22歳の若い茶髪・ピアスの男性に(いや、近頃、そのファッションはふつうだと思うのですがね)、ウェストールの拙訳『真夜中の電話』をすすめたら、買ってくれたそうです。うれしいかぎり。

 本をすすめてくれる人がいて、買ってくれる若い人がいるのは幸せです。

 

(M.H.)