翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム再録「原田勝の部屋」

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第16回 リーディングのディテール(その1)

★リーディングとは、結局、原書を読むこと。そして、どこがどうおもしろいと思うか、思わないか、を文章にすること。(2017年08月12日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー リーディングとは、原書を読んで作品を評価し…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第15回 ペーパーバック百冊

★この記事を書いたあとも、少しずつ本は増え、しかも、そのうちに、「あっ、翻訳されちゃった。やっぱり面白かったんだ、すぐに読んでおけばよかった……」という原書がたまっていきます。でも、たぶん、これは必要な投資なんだと思います。ピンポイントでとり…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第14回 「です・ます」調のこと

★この作品は、章が変わるごとに、老いた女性の語り手の文を「です・ます」調で、十代の男の子が語り手の文を「だ・である」調で処理するという、とてもやりがいのある翻訳作業でした。こういうの、じつは、けっこう好きです。うまく行くと、文章に味わいが加…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第13回 キャラクターの訳し分け

★セリフによるキャラクターの際立たせ方はとても面白い翻訳作業です。自分は、どこでこういう技(?)を身につけたのかと考えてみると、読書体験はもちろん大きいのですが、中高生のころ、毎日のようにテレビで見ていた洋画劇場の字幕や吹き替えのせりふに基…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第12回 戦争を知らない子どもたち

★8月になると、この記事を自分でも読み返したくなります。イラクもISからの解放が見えてきましたが、今度は、その後が、また大変でしょう。記事の中で、わたしが訳した戦争をあつかった児童文学を挙げていますが、このあとも、『フェリックスとゼルダ』、『…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第9回 翻訳の際の心がけ ── その4

★「自分の日本語」という表現は、傲慢な気もしますが、でも、自分の翻訳した本はすべて自分の言葉で成り立っているのだと思うことは、とても大切だと思うのです。(2017年08月02日「再」再録)★ 『レトリック感覚 (講談社学術文庫)』と『レトリック認識 (講…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第8回 翻訳の際の心がけ ── その3

★この回に挙げた、「声に出して読め」と「見直すほど良くなる」という心がけ二つは、やる気さえあればだれでにもできる訳文向上術だと思います。あとは、どれだけしつこくやるか。天才でない翻訳者は、しつこくやるしかないのです。(2017年08月01日「再」再…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第7回 翻訳の際の心がけ ── その2

★日本人は生真面目なので、翻訳においても、原書の構造や語彙をできるだけ生かそうとするのだと思いますが、できた日本語の文章が意味不明では困るわけで……。おそらく、この「(3)訳者は日本語に寄り添え」というのが、一番できそうでできないことのような…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第6回 翻訳の際の心がけ ── その1

★さて、今日は第6回を再アップします。こういう面倒くさいことを常時考えているわけではありませんが、一度考えておくと、迷った時、決めておいた方針が無意識のうちに助けてくれるような気がしています。(2017年7月30日、「再」再録)★ ーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第3回 「見取り図」が描けるか?

★見取り図は今もできるだけ書くようにしていますが、原文ではつじつまが合わないことはやはりちょくちょくあって困ります。この回では偉そうに色々書いていますが、編集者さんや校正者さんに指摘されて初めて気づくことが多いのは今も変わりません。読者によ…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第2回 「もちこみ」のこと

★最近のもちこみ成功例は、『ペーパーボーイ』(ヴィンス・ヴォーター作、岩波書店、2016年)、『ハーレムの闘う本屋』(ヴォーンダ・ミショー・ネルソン作、あすなろ書房、2015年)、『フランケンシュタイン家の双子』(ケネス・オッペル作、東京創元社2013…

コラム「再」再録 「原田勝の部屋」 第1回 翻訳のジャンル

★なかなかブログが更新できず、ついに禁断のコラム「再」再録をしようと思います。まあ、自分で読み返す意味もありますし、Facebook開始以降の読者の皆さんの中には、お読みいただいていない方もいらっしゃるはず。というわけで、以下、翻訳について書いた昔…

《寄稿》伊達淳さん(後半)

昨日の続き。 伊達さんの話を聞いていると、とても翻訳に対して謙虚で、調べ物やレジュメの書き方など、すごく丁寧なお仕事をされていることを感じました。ああ、もう少し自分も手をかけてやらないといけない、と反省しました。 奥様の故郷で、今、お住まい…

翻訳家、伊達淳さんと。

伊達さんとは昨日が初対面でした。お住いのある松江から、東京の出版社回りをするために上京されるというので、お会いしたのですが、とても初対面とは思えず、二時間半もの間、二人で翻訳にまつわる話をノンストップでしゃべりまくりました。楽しい時間でし…

コラム再録「原田勝の部屋」 第56回 襟を正す

『S先生のこと』(尾崎俊介著、新宿書房、2013) この回は、上のエッセイ『S先生のこと』と、映画『ドストエフスキーと愛に生きる』のことを書きました。どちらも翻訳に深く関わった作品です。では、どうぞ。

コラム再録「原田勝の部屋」 第52回 至福の時

この回で触れたのは、『王国の鍵3、海に沈んだ水曜日』(ガース・ニクス作、主婦の友社)です。これ、カバーをはずすと、きれいな水色の表紙をしています。この水色のおかげで、電車の中で男の子が読んでいるのがこの本だと気づきました。

コラム再録「原田勝の部屋」 第50回 読書会

この回でとりあげた『クラバート』。一度見たら忘れられない表紙ですね。 クラバート 作者: オトフリート=プロイスラー,ヘルベルト=ホルツィング,中村浩三 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 1980/05 メディア: 単行本 購入: 18人 クリック: 353回 この商品…

コラム再録「原田勝の部屋」 第49回 フランケンシュタインは怪物か?

素敵な表紙絵を描いてくださったのは浅野隆広さん、デザインは藤田知子さん。大好きな表紙です。 浅野さんは、時代小説の表紙をたくさん描いています。『獣の奏者』の表紙も浅野さんです。

コラム再録「原田勝の部屋」 第48回 翻訳の速度

クルム伊達さん、がんばってますよねえ。中年の星ですよ。公子スマイル健在、というか、若い頃より断然愛想いいし。何より、ほかにあんなテニスする選手いません。錦織くんもそう。ユニークなんですよ、テニスが。え? 翻訳と何の関係があるのかって? いや…

コラム再録「原田勝の部屋」 第45回 訳者の名前

意識して選んでいるわけではないのに、なんだか、ちょっと怖いイメージの本が多くなってしまうのが不思議です。下の4冊は、いずれもわたしの訳書の原書カバー。 一度、出来上がったばかりの訳書を、ある書店の児童書売り場の方に読んでもらおうと思ってもっ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第44回 鉛筆と赤ペン

まとめ買いした「消せる赤ペン」も、だいぶ減ってきました。たくさん仕事をして、どんどん使いたいものですが、赤ペンが使われるということは、ワープロで訳文をこしらえた段階での完成度が低い、ということでもありますから、赤ペンの在庫は減らないほうが…

コラム再録「原田勝の部屋」 第41回 原作者との交流

1999年に、ロバート・コーミア氏から届いたクリスマスカード。 メールやSNSの発達で、手紙や葉書のやりとりがなくなってしまったのはちょっぴり残念です。

コラム再録「原田勝の部屋」 第40回 翻訳世界旅行

この記事を書いたあとの訳書の舞台をたどっていくと、ジュネーブ(『フランケンシュタイン家の双子』、『フランケンシュタイン家の亡霊』)のあとは、イングランド北部(『ロバート・ウェストール短編集 真夜中の電話』)、公民権運動が盛んだったころのニュ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第32回 ニヤリとしたこと

この回でとりあげた、『王国の鍵3 海に沈んだ水曜日』の原書表紙がこれです。シリーズの中でも、好きな巻、好きな表紙です。

コラム再録「原田勝の部屋」 第31回 本の力

東日本大震災からすでに4年の歳月が流れてしまいました。いや、まだ4年しか経っていないのに、わたしたちの記憶が風化していく速さに危機感をもつべきなのかもしれません。 本には、戦争や災害や事件を活字として記録にとどめ、再現し、あるいは別の形で評…

コラム再録「原田勝の部屋」 第30回 翻訳者の若書き

わたしの「若書き」ならぬ、「若訳」は、これ。 未知の生命体―UFO誘拐体験者たちの証言 (SECRET LIFE) 作者: デイヴィッド・M.ジェイコブズ,David Michael Jacobs,矢追純一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1994/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第29回 あとがきはだれのため

あとがきや訳注は不要だ、という考えもあると思います。 本というのは、それ一冊で完結しているわけではなく、ほかの本や辞書たちと相互に関係しあって知識の集積の一部を成していると考えれば、原作や原作者にまつわる情報は、その本の中になくてもいいの…

コラム再録「原田勝の部屋」 第26回 現場の力

この回は、はからずも、昨日の記事に書いた愛媛の工場でのことに触れています。 わたしがかつて勤めていたその重機械メーカーは、いろいろなものを作っていますが、当時は、これも作っていました。露天掘りの鉱山で発破をかけたあとの表土を取り除く巨大電動…

コラム再録「原田勝の部屋」 第20回 紆余曲折

訳しはじめた本が、出版できなくなるかもしれない、というのは、案外、翻訳者は経験していることなのかもしれません。この回は、そんなわたしの訳書のことを書きました。 わたしの知らない母 作者: ハリエット・スコットチェスマン,Harriet Scott Chessman,…

コラム再録「原田勝の部屋」 《インタビュー》第3回 後半 ── 東京創元社編集部 小林甘奈さん・宮澤正之さん

東京創元社は、ヤングアダルト作品も出版してくれていますが、英米ではYAとして出ていても、中身がSFやファンタジー、ホラー、などであれば、一般向けとして出すこともあります。 拙訳のこの連作もそう。もとはカナダの作家、ケネス・オッペルのYAものです。…